プロジェクタを使って影絵をしよう
− プロジェクタの使い方を「180°」変えた使い方 −

2007.1/26作成
子どもがプロジェクタに初めて出会ったとき、手を出して光を遮ったりしてじゃまをする子が必ずいるものだ。こういう子はふだんから何かにつけ注意を受ける運命あると思う。やめろと言ってもなかなか止まないのは、落ち着きがないというような子どもの性質が原因ではなく、本来ものの影を映して動かすのは面白いことだからである。担任がプロジェクタを使って授業をすることで児童は機器を身近に感じるというが、実際の子どもはそんな高尚なことには無関心であり、強い光を出すあの機械でトコトンまで遊んでみたいと思っているのである。
 今回は、光源の反対側から見る、映っているものより影の方を見るという具合に、これまでとは見方が「180°」違うプロジェクタの使い方を紹介しよう。



 2006(平成18)年度、はらきんの勤務校は生徒指導の県大会を開催した。生徒指導の公開授業って、どんなことをするのだろうとはじめは思った。生徒指導は教科のように独立したものではないので、国語や道徳などの授業にからませて、「生徒指導が行き届いていると、こんな授業ができますよ。」あるいは、「授業中の子どもたちがこんなにいきいきとしていますよ。」という感じで行う。
 はらきんは何の授業を公開したらいいものかと考えたが、何を思ったのか国語にした。はらきんは免許こそ、小学校以外に中学校国語、高校国語を持っているが、授業の実力は悲惨なものである。子どもから「算数を教えているときのはらきん先生はかっこいい」と言われることがある一方で、「はらきん先生の国語は最低だ!」と何度も言われた。国語は最も時数の多い授業でもあるから、国語がつまらないということは学級経営全体に影響する。国語は毎日あるから、一日一回子どもはつまらない思いをすることになるからだ。苦手な部類に入る教科で県レベルの公開授業をするのはいささか無謀とも思えたが、これを機会にひとつ勉強してみようと考えた。

■ 影絵の魅力

国語科の教材としてみた影絵

 国語を使うことは分かってもらえたと思うが、ではなぜ影絵なのか。
 国語科で影絵を使おうと思った最初の動機は、「名前を見てちょうだい(東京書籍・2年下)」で主人公えっちゃんを大きくしようと思ったからである。それまでの物語文で動作化などを実践してきたが、本教材でえっちゃんをどうやって大男より大きくするかという問題が出た。大きくなったつもり・・・というのでもいいが、もう一ひねりできないものか。そこで思いついたのが影絵である。

 実践にあたって多少影絵について調べてみると、光源から光を出してスクリーンに影を映せば影絵になるかというと、そうでもないことが分かってきた。では、影絵とはどのようなものかを少し整理してみよう。
@人形は影となって登場するので、黒く塗りつぶされた輪郭線だけが見えることになる。つまり、キャラクターがデフォルメされているので、聴衆側は黒くなった部分を想像力で補わなければならない。たとえば「きれいなお姫様」が出てきたとして、そのお姫様がどんな顔をしていて、どんな模様の服を着ているか想像することになる。物語の命がイメージだとすれば、ナレーションとわずかな輪郭線を手がかりにして想像をふくらませることは、国語の力そのものである。
A影絵の特徴として、だれでも知っている作品が扱いやすいことが上げられる。たとえば、劇で一寸法師をしようと考えたとすると、有名すぎて「そんなありきたりのお話、やってられるかよ。」ということになりやすい。衣装などを多少凝ってみせても、「なんだあの衣装は!」とか、「へんなお姫様!!」なんてこともありえる。ところが影絵では、その部分が見ている側の想像に任されているので、自分が想像した一寸法師やお姫様を画面の中に登場させることができる。自分が想像した登場人物だから、「へんなの」ということにはならない。最近の映像情報はリアルすぎて、逆に想像力を奪われたり幻滅したりすることがあるが、影絵ではそういうことがない。
 ただし、影絵に向かないお話というのもある。たとえば「3びきのこぶた」のように、似たようなキャラクタがいくつも出てくるお話は、それぞれに個性を出すことが難しい。

動作化との比較
 国語では動作化がよく行われる。子どもたちの読みが深くなってくると、動作化に変化が現れることがある。「あ、今、手をこういうふうに動かしたね。どうしてそういうふうにしようと思ったのかな?」という授業もよくやってきたが、変化が微妙すぎて分からないことも多い。ところが影絵なら、変化をつけた部分以外は固定されているので、子どもの意図が読みやすい。その意図をすかさず児童に聞けば、「本に、○○と書いてあるから。」といった返事が返ってくる。つまり、その児童の読み取りが手に取るように分かるのである。

大道具・小道具

 通常’影絵’というと、操作する側と見る側はスクリーンをはさんで分かれているものだが、学習で使う場合、聴衆がどちら側から見るかは一考の価値がある。国語科で動きやセリフを考えさせながらやるとすると、操作する人と同じ側でいっしょに考えることもありえる。同じ側にいるときは、プロジェクタ用の自立式のスクリーンでもいいだろう。分かれて行う場合は、白布をはった本格的なスクリーンが必要だ。
 光源にはプロジェクタを使った。OHPなどでもよいと思うが、背景がパソコンで簡単に作れるところがいいまた、プロジェクタには明るさなどさまざまな補正機能があるので、体育館と教室など条件が変わっても対応しやすい。

 
(左)光源とパソコンは離れすぎない方がいい。
(右)キャラクタは横向きが原則。横向きの方が人物などの特徴を出しやすいからだ。これが高度になると、手足や首が動かせる人形を使うことになる。
紙には強度が必要なので、厚紙の方がいい。それでも、細い部分は竹ひごなどで補強することもある。

  
(左)’舞台’の高さは、操作する児童がしゃがんでも頭の影が出ない程度の高さが必要だ。
(中)セリフを言いながら操作するのはむずかしい。暗記しておくのが理想だが、舞台の下に拡大コピーしておくとよい。人数に余裕があれば、セリフを言う人と動かす人を分けてもいいだろう。
(右)暗い背景だと影がはっきりと出ないので、パソコンでかなり白く処理した画像を使う。見る側の想像力を使うため、クリアな背景が必要ないのが影絵の特徴とも言える。


(左)はじめ、はらきんは人形に厚紙を切った白のままで使っていた。それでは人形に背景が映ってしまい、かんじんの影の重なりが分かりにくい。そこで、途中からは墨汁で黒く塗ってみた。
(右)人形を支える棒には、平角材を使ってみた。人形の面がきちんと向いているかどうかが、手の感覚からも分かるようにするためだ。

■ 実践例

事前の活動

指導者も模索状態。この段階で発見することが多かった。
  
光源を直接見ないという点だけしっかり指導しておいて、あとは遊ばせてみよう。拡大効果など、ものの2分で発見する。
ムシを使って、ショート影絵をしてみた。別のグループには影を先に見せて、見る人によって想像するムシが違うという影絵の特徴を理解させたい。
話し合いが大切。影絵を動かしながら意見を出し合うこともが多い。ムシには色をつけているが、観衆に見えるのは影だけであることを理解させるためだ。

実践例@ 「一寸法師」

 
影と言うことで、表現方法は制限されている。動きやことばの言い方を大げさにしないと観衆に伝わらない。そこがねらいだ。
はらきんは、操作する側と聴衆が別れる形を取ったので、ときどきビデオにとって自分たちの出来映えを確認させた。

実践例A 二年国語「名前を見てちょうだい」

 
家庭学習での本読みや授業の工夫で、ストーリーをしっかり把握させておこう。
拡大効果で映し出された大男。大男を持っている男の子はかなり光源寄りで操作している。ストーリー展開の都合上、実際の大男の人形は’えっちゃん’よりも小さい。
教科書にのっている物語文をそのまま劇の台本にした場合、ナレーションが多すぎる。説明の多い劇はふつうはだめなのだが、影絵なら画面からの情報が少ない分、ナレーションや説明が多くても不自然ではない。教科書の物語分がそのまま台本にできる点がいい。

実践例B 情報教育「名前を教えないでちょうだい」

「名前を見てちょうだい」のパロディで、個人情報の保護を訴えた。背景はパワーポイントで作ると、背景の変化も簡単になる。文字を入れるときには、ミラーリングで反転させることをお忘れなく。2年生以上はみんな勉強して知っている物語がベースになっているので、高学年の児童もなつかしさ半分でよろこんで見ていた。



おわりに
 ’えっちゃん’の大きさを変えたいという単純な動機から始まった影絵の学習だが、いろいろな勉強ができた。
 プロジェクタには何を使ったのか知りたい人もいるだろう。学校に3台あるプロジェクタは研究発表当日に他の先生や全体会などで使うことになったので、はらきんは独自にモニターを申し込んで無料で貸してもらうことにした。貸してもらったのは、アビオのiP60。最新機種ではないが、そこがまたミソで、最新ではない分、長期間貸してもらうことができた。影絵以外の普段の学習でも大活躍したことは言うまでもない。


by harakin